No.407
2008-06-08
脱・脱ダムと新幹線
494 船の旅・考
493 「キャタピラー」
492 急がば回れ!
491 三浦哲郎の歳月
490 未完絶筆 良寛
489 女優というもの
488 「クロッシング」
487 ペシャワール会 中村哲
486 独楽吟
485 6月15日に考える
484 究極の分かち合い
483 思い出袋
482 浦河べてるの家2
481 経営者人材
480 「茜色の空」
479 「嗚呼 満蒙開拓団」
478 追悼・井上ひさし
477 ホスピス・ものがたりの郷
476 拉致家族会
475 ものがたり診療所
474 実朝忌
473 地域金融
472 日韓併合100年
471 「逝かない身体」
470 春近し
469 みすず書房
468 イサム壮行会
467 労働市場の改革を!
466 天上大風
465 ベーシックインカム
464 捨てる心地よさ
463 「カティンの森」
462 回想の魔術
461 ノンエリートの社会空間
460 「普天間」を乗り切る
459 光州の記憶
458 死者よ来たりて
457 ビジネス・インサイト
456 率直な疑問
455 自己愛に沈む若者
454 続・演劇の力
453 演劇の力
452 「こどものその」
451 農業政策の分岐点
450 抱きしめたい8月
449 “こころ”という代物
448 不良少“女の一生”
447 湯布院と博多祇園山笠
446 男おひとりさまの老後
445 ふるさときゃらばん公演
444 名古屋市に注目!
443 トップ人事と秘話
442 バロン・サツマ
441 「グラン・トリノ」
440 「パンデミック」
439 後輩X君へ
438 すべてが廃虚に
437 「法然と親鸞」
436 「ムサシ」
435 ヒトを選ぶ
434 闇社会・京都の影
433 笑うしかないか
432 ラジオと映画
431 通訳から作家へ
430 「生き急ぐ」内村剛介
429 携帯を忘れた旅
428 1枚の賀状から
427 “がん”からの生還
426 2人の恩人との別れ
425 育英基金構想
424 レッドクリフ
423 アパの真相
422 無冠の車椅子
421 画家 木下晋
420 科学者たちの楽園
419 救急精神病棟
418 紅とんぼ
417 極道記者
416 機先を制する
415 新・脱亜論
414 浜口陽三・南桂子
413 朝の靴音
412 “友川カズキ”を贈る
411 コンベンションビジネス
410 キューバ
409 信長
408 横付けサービス
407 脱・脱ダムと新幹線
406 ポスト消費社会
405 黒山もこもこ
404 ふり返る勇気
403 吹田事件
402 伏木・没落旧家
401 「じゃあな」




 田中康夫が知事選で勝ち残っていたら、北陸新幹線の開業は遠のいていただろう。ひょっとしたら、世紀の愚策として、ひとり新幹線建設断念をねらっていたのかもしれない。長野で用地買収が難航していると聞いてはいたが、「世界」6月号「いかにして脱“脱ダム”は行われたか」を読んで、迂闊にも初めて真相を知ることになった。
 06年8月当選した村井長野県知事は、すぐに「脱・脱ダム宣言」を唱え、田中が凍結した浅川ダムを建設する、と方針を変えた。旧ダム計画は「脱ダム宣言で白紙となった」とし、治水専用の穴あきダムに方式を変え、当初の400億円よりもコストカットし、場所は同じだが、似て非なるものだと強弁した。そして新規事業ゆえに、公共事業評価監視委員会をすっ飛ばしてしまった。単なる前任知事への意趣返しとも思えない。なぜ、そこまでと誰しも思うが、背景に北陸新幹線の用地買収と密接に絡んでいたのだ。
 新幹線建設がどうして、浅川ダム建設と結びついてしまったのか。浅川と千曲川の合流地点に近い長沼地区が問題の地域で、線路用地の買収対象3キロがかかっている。加えて、新幹線車両基地を同地区にある「自然遊水池」を埋めたてて建設する計画となった。浅川の水が千曲川に流れ込めずに逆流し、宅地や田畑に浸水してくる内水被害に同地区は永年苦しめられてきた。自然遊水池を車両基地に転用すれば、さらに水害がひどくなるのではと懸念した住民は、この解決がなければ3キロの用地買収に応じないとした。焦る長野県は、上流にダムを建設して貯水すると提案し、その懸念を封じ込めた。93年、車両基地を受け入れる条件として、「2000年度までに浅川ダムを早期に完成させる」との確認書が交わされた。
 ところが田中前知事が「脱ダム宣言」をやって、建設を中止したために、約束違反だとして交渉に長沼地区は応じていなかった。この3キロのために、長野―金沢間の14年開業ができないという事態になっていたのである。村井知事は切羽詰って、打開に打って出たというのが真相である。
 河川工学の今本博健京大名誉教授は「河川改修で十分、洪水対策も可能。なんであんな所にダムを造るのかさっぱりわからん」と断言している。知事はこの忠告に、「お話はよく理解できる。しかし政治判断でやらざるを得ないのです」と声をふりしぼっている。
 長野県民はこれらの事態をどう思っているのだろうか。長野新幹線での地元負担、在来線しなの鉄道を第3セクターで持たされた赤字負担があり、その上に北陸新幹線部分の負担が追加されてくる。長野―金沢間の総事業費約1兆6000億円で、長野県の負担が約640億円。更に直江津―長野間並行在来線の第3セクター分が加わり、更に更に浅川ダムの県負担分3割で、ほぼ100億円がかぶさってくる。現在でも長野県の借金返済の重さは、北海道、兵庫に続くワースト3となっている。
 懲りない“われわれ”と自嘲するしかない。本州四国架橋で愚かにも3ルートを建設し、どうにもならないまま、赤字を垂れ流している現実をどうみているのであろうか。苦し紛れの政治判断で、どれほどのツケがまわってくるか、頭を冷やして考えてみる時である。
 それでは、どんな選択肢があるのか、と問われれば、この老人にはいい返すものは何もない。長沼地区の人には、河川改修の選択肢をもっと考えてほしい、とお願いするくらいである。また、富山でも偉そうなことはいえない、規格変更で加越トンネルを無駄にしてしまった。並行在来線維持でも、優れた対策を持ち合わせているわけではない。
 堕ちよ!と叫ぶ坂口安吾が急に思い起こされる。そして、悪友がいう。「お前にひとつだけ褒められるとしたら、苦し紛れの再婚をしなかったことぐらいだ」。再婚には、それほど大きなツケがまわされてくるのか、しばし考えてみた。そういえば、クレジットカードを再婚相手に作ってやって、その処理に困り果てたという話は聞いたことがある。脱再婚宣言ということにしておこう。バカヤロー、お前には全く必要ないことだ。そうらしい。


 
 

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