No.439
2009-05-12
後輩X君へ
495 「さすらいの舞姫」
494 船の旅・考
493 「キャタピラー」
492 急がば回れ!
491 三浦哲郎の歳月
490 未完絶筆 良寛
489 女優というもの
488 「クロッシング」
487 ペシャワール会 中村哲
486 独楽吟
485 6月15日に考える
484 究極の分かち合い
483 思い出袋
482 浦河べてるの家2
481 経営者人材
480 「茜色の空」
479 「嗚呼 満蒙開拓団」
478 追悼・井上ひさし
477 ホスピス・ものがたりの郷
476 拉致家族会
475 ものがたり診療所
474 実朝忌
473 地域金融
472 日韓併合100年
471 「逝かない身体」
470 春近し
469 みすず書房
468 イサム壮行会
467 労働市場の改革を!
466 天上大風
465 ベーシックインカム
464 捨てる心地よさ
463 「カティンの森」
462 回想の魔術
461 ノンエリートの社会空間
460 「普天間」を乗り切る
459 光州の記憶
458 死者よ来たりて
457 ビジネス・インサイト
456 率直な疑問
455 自己愛に沈む若者
454 続・演劇の力
453 演劇の力
452 「こどものその」
451 農業政策の分岐点
450 抱きしめたい8月
449 “こころ”という代物
448 不良少“女の一生”
447 湯布院と博多祇園山笠
446 男おひとりさまの老後
445 ふるさときゃらばん公演
444 名古屋市に注目!
443 トップ人事と秘話
442 バロン・サツマ
441 「グラン・トリノ」
440 「パンデミック」
439 後輩X君へ
438 すべてが廃虚に
437 「法然と親鸞」
436 「ムサシ」
435 ヒトを選ぶ
434 闇社会・京都の影
433 笑うしかないか
432 ラジオと映画
431 通訳から作家へ
430 「生き急ぐ」内村剛介
429 携帯を忘れた旅
428 1枚の賀状から
427 “がん”からの生還
426 2人の恩人との別れ
425 育英基金構想
424 レッドクリフ
423 アパの真相
422 無冠の車椅子
421 画家 木下晋
420 科学者たちの楽園
419 救急精神病棟
418 紅とんぼ
417 極道記者
416 機先を制する
415 新・脱亜論
414 浜口陽三・南桂子
413 朝の靴音
412 “友川カズキ”を贈る
411 コンベンションビジネス
410 キューバ
409 信長
408 横付けサービス
407 脱・脱ダムと新幹線
406 ポスト消費社会
405 黒山もこもこ
404 ふり返る勇気
403 吹田事件
402 伏木・没落旧家
401 「じゃあな」




 元気でやっていますか。君はいま、わが長男と同じ35歳、いわば団塊ジュニアにして、受難の世代です。NHK特集を見るまでもなく、厳しい状況にあることはよくわかります。半面、社会に出て10年余、世の中こんなものです、と居直っているようにも見えます。人生の先輩というのもおこがましいのですが、“さにあらず”と最後の挑発をしてみたい衝動に駆られました。時代は激動の渦中にあり、ちっぽけな経験則など当て嵌まらないが、思いだけは伝えておきます。数年前に購入していた毎日新聞OB河内孝の著「新聞社〜破綻したビジネスモデル」(新潮新書)を読み返し、触発されてのものです。
 小生が入社したのは昭和43年。当時の人事部長は、新聞というのは購読料と広告とふたつのポケットがあり、経営はゆるぎないといっていました。購読料は3年おきぐらいに改定され、世帯増加で部数も着実に増え、広告収入は2桁成長です。技術革新もめざましく、経営の効率は格段に改善されていきました。誰もがその恩恵を享受できる時代だったのです。それがどうでしようか。喪われた10年で急減速となり、昨年末から急降下です。あれよあれよと逆回転で、奈落の底に落ち込んでいく恐怖に、なす術なしと推察しています。それでも、手探りで苦労している君の表情が眼に浮かびます。
 1月26日、誰もが予期せぬ社長解任劇が起きました。予期せぬといわぬまでも、より親しい仲間内の酒席では、解任動議の票読みをやっていました。窮鼠ネコを噛むことすら想像できない驕り、鬼になるという時代錯誤経営、女性スキャンダルを自ら清算できない公私混同、ここまでやるかという下劣な忠誠心競争。そんなことを思えば、当然の成り行きです。
 しかし、問題はこれからです。いわばパンドラの箱を開けたようなもの、特に河内氏が指摘する部数至上の虚妄は喫緊の問題です。社長交代だけで、すべてが解決するものではありません。解任劇を目論んだ人たちも、個人的な思惑が動機であったにせよ、構造的なビジネスモデル崩壊という危機感がそうさせたはずです。当然、新しい経営理念が掲げられ、役員会はもちろんのこと、組合であれ、職場であれ、また俄仕立ての職場横断的な勝手連組織も加わり、百家争鳴といった熱い論議で沸き立っていることだろうと想像していました。あれから3ヵ月余、意に反して、聞こえてくるのは、社長が代わっただけですよ、という投げやりな声ばかりです。
 九州の地方紙OBからの檄文によると、夕刊を廃止し、朝日新聞の賃刷り契約を行い、印刷工場を別会社にし、退職金の大幅カットと、時間と競争するかのように手を打っています。消費税アップ前に経営体質の徹底強化を図るという戦略です。そこまで追い込まれていないというのは、部数の虚妄にどう立ち向かうかどうかの覚悟が出来ていない証左といえます。
 野に遺賢ありや、なしや。これがキーポイント。手垢の染まっていない新鮮な人材が出てくるかどうかです。とてもいません、という返答だろうけど、それは間違い。きっといます。かくいう君がそうです。35歳こそ有資格者。幕末から明治維新、敗戦からの戦後復興、君みたいな若い人材が困難に立ち向かったのです。とにかく今からでも遅くはありません、勉強を始めてください、できれば志を同じくする人が集っての勉強会を組織するのもいいでしょう。自社の損益計算書ぐらいは自分で読み込むことです。
 企業のステークホルダーとして、最も影響力が発揮できるのは株主です。ほぼ社員全員が株主という構成は、いままでは全く機能せずに、裸の王様を君臨させてきましたが、これからはこれを武器にすべき時にきています。株主総会で全員が、意思表示をすること、いわばリーダーへの信任投票です。より厳しい状況に直面することは目に見えていますが、そこには解放された働く喜びがあるはずです。個人の尊厳が尊重される職場の意識レベルをどう確保するか。各人が問われるべきです。委任するということはその放棄に他なりません。自己決定の厳しさと生きがいは裏表といえます。さあ、勇気を出して言葉を発してください。もちろん得意のユーモア精神も忘れずに。見守っています。

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