No.485
2010-06-16
6月15日に考える
494 船の旅・考
493 「キャタピラー」
492 急がば回れ!
491 三浦哲郎の歳月
490 未完絶筆 良寛
489 女優というもの
488 「クロッシング」
487 ペシャワール会 中村哲
486 独楽吟
485 6月15日に考える
484 究極の分かち合い
483 思い出袋
482 浦河べてるの家2
481 経営者人材
480 「茜色の空」
479 「嗚呼 満蒙開拓団」
478 追悼・井上ひさし
477 ホスピス・ものがたりの郷
476 拉致家族会
475 ものがたり診療所
474 実朝忌
473 地域金融
472 日韓併合100年
471 「逝かない身体」
470 春近し
469 みすず書房
468 イサム壮行会
467 労働市場の改革を!
466 天上大風
465 ベーシックインカム
464 捨てる心地よさ
463 「カティンの森」
462 回想の魔術
461 ノンエリートの社会空間
460 「普天間」を乗り切る
459 光州の記憶
458 死者よ来たりて
457 ビジネス・インサイト
456 率直な疑問
455 自己愛に沈む若者
454 続・演劇の力
453 演劇の力
452 「こどものその」
451 農業政策の分岐点
450 抱きしめたい8月
449 “こころ”という代物
448 不良少“女の一生”
447 湯布院と博多祇園山笠
446 男おひとりさまの老後
445 ふるさときゃらばん公演
444 名古屋市に注目!
443 トップ人事と秘話
442 バロン・サツマ
441 「グラン・トリノ」
440 「パンデミック」
439 後輩X君へ
438 すべてが廃虚に
437 「法然と親鸞」
436 「ムサシ」
435 ヒトを選ぶ
434 闇社会・京都の影
433 笑うしかないか
432 ラジオと映画
431 通訳から作家へ
430 「生き急ぐ」内村剛介
429 携帯を忘れた旅
428 1枚の賀状から
427 “がん”からの生還
426 2人の恩人との別れ
425 育英基金構想
424 レッドクリフ
423 アパの真相
422 無冠の車椅子
421 画家 木下晋
420 科学者たちの楽園
419 救急精神病棟
418 紅とんぼ
417 極道記者
416 機先を制する
415 新・脱亜論
414 浜口陽三・南桂子
413 朝の靴音
412 “友川カズキ”を贈る
411 コンベンションビジネス
410 キューバ
409 信長
408 横付けサービス
407 脱・脱ダムと新幹線
406 ポスト消費社会
405 黒山もこもこ
404 ふり返る勇気
403 吹田事件
402 伏木・没落旧家
401 「じゃあな」




 6月15日は、安全保障を考える日と自らに課してみたい。この2日間の菅首相答弁は「在日米軍の抑止力は極めて重要。(辺野古移設で)米国との再交渉や閣議決定の見直しを行うつもりはない」に終始している。この答弁を検討する菅、仙石、枝野は、どんな対話をしたのだろうか。
 「余計なことは語らずに、参院選を乗り切ることだけに傾注しよう」「沖縄の負担軽減を前面に、ひたすら頭を下げて、カネも手間暇も惜しまないことだ」「米国対策は外務省一本に絞るが、オバマの人脈ルートも何とか見つけ出し、起死回生策は本当にないのか、官邸ルートでやってくれ」「守屋元次官が他人事のように約2兆円を捨てましょうといったが、気が重いな」「加えてグアム移転も日本持ちということも忘れるなよ」「密約手法でもなければ、乗り切れないというのがよく理解できるな」こんな具合だろうか。
 手控えていた山崎豊子の「運命の人」全4巻を、発刊から1年遅れで通読した。ご存じ沖縄密約をスクープしながら、女性事務官に秘密漏洩をそそのかしたとして有罪となった西山太吉・毎日新聞記者がモデルの小説だ。その後、米国公文書から密約が存在することがわかり、その情報開示と賠償訴訟で完全勝訴を勝ち取っている。山崎豊子の作品は粘液質な取材(彼女の取り柄なのだが)が手を取るように展開で、面白いが違和感を感じる。それはさておき、西山記者の凄まじい記者魂とその後の転変には恐れ入る。沖縄返還に賭ける佐藤栄作首相とこれをサポートする福田赳夫蔵相の野心が交渉を捻じ曲げ、それを知り抜く米国が赤子の手をひねるように交渉を進めていくのがよくわかった。密約の存在を自ら明かした吉野文六・元外務省局長が、核抜き本土並みを嘘で塗り固めての“きれいごと”過ぎる交渉と、佐藤首相の密使・若泉敬がキッシンジャーとことごとく先回りして、外務省を差し置いて交渉が進み、それを追認せざるを得ない状況に苦悶する様も、外交の難しさを教えてくれる。
 思えば日米安保条約は、51年のサンフランシスコ講話条約と同じ日に調印されている。戦争を放棄した日本が、その裏で軍事同盟を結んでいるいびつさ、不平等さを孕んでいた。米ソの代理戦争と化した朝鮮戦争がそうさせたのであり、米国の占領意識とその占領で植え付けられた卑屈さがそのまま条約となっている。それも自業自得といっていい。ポツダム宣言を8月の最初の数日のうちに受け入れていれば、原爆の投下も、ソ連の参戦もなく、もちろん朝鮮の分割もなく、朝鮮戦争は起り得なかった。悔やまれてならない「歴史のもし」であるが、この罪業を引き受けていかなければならない
 60年の安保改定は岸信介の執念だけで自然成立したが、この時の大衆運動が自民党政権の大きなトラウマとなった。70年では、何ら議論することなく自動延長とした。そして選択したのが沖縄返還である。その返還のために密約などで支払った代償が、3億2000万ドルというカネばかりでなく、米国の意を忖度し、迎合していくしかないという交渉態度である。それがいまに続き、正面から向き合うことなく解釈変更、解釈改定で済ませてきた。05年の「日米同盟未来のための変革と再編」、06年の「再編実施のための日米ロードマップ」で、米国の世界戦略に組み込まれてしまって、どうにも身動きが取れなくなっている現実である。鳩山も観念するしかなかった。
 さて、菅新政権のリアリズムはどこまで考えているのであろうか。辺野古移設は、身を切られるような代償であるがやむを得ないとするのかどうか。選択肢を明確に、それによってどんなことが起きるのかを提示すべきだと思う。血のにじむ代償と引き換えに、2050年までの基地全面返還平和へのロードマップぐらいは宣言すべきだ、それぐらいの根性はもっているだろう、菅君。
 参照/「沖縄密約」(岩波新書)、世界6月号「迎合、忖度、思考停止の同盟」(水島朝穂早稲田大学教授)

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